「町を焼かれるのを見るのは、これで何度目だったかな」
エーリカの一人、トリヒターヴィンデ小隊のアーデルハイトは、狙撃銃を構えてつぶやく。
聖暦1800年代後半——。
「神聖ローマ帝国の正当な継承国」を主張し、領土拡張政策に踏み切ったベルリア帝国。各国の批判を浴びながらも四つの国を属州とした帝国は、その戦訓と戦後処理の必要から、戦災孤児たちを少女兵として組織した。
それがエーリカ隊。聖暦1933年のことだった。
彼女たちは苛烈な民族主義の中、あくまで属州民少女遊撃隊として組織された。
「帝国に尽くせば、帝国人と同じ待遇を約束」されて。
10代半ば、早ければもっと幼い頃から戦場に投入されていく少女たち。
歴史上、最初のエーリカたちの仕事は、聖暦1936年のイベリコ内戦といわれている。
1938 荒野に咲く花ありき
トリヒターヴィンデ小隊
Trichterwinde Zug
Barbel バルベル
聖暦1922年4月1日生。
ジェリコ属州ブリューン出身。
小隊長。
思慮深く理知的で合理的。
自分の少女兵という立場に悩み、苦しむ。
他の小隊長たちからは能力はあるのに煮え切らない善人との評価を受けるが、小隊メンバーからは厚い信頼を受ける。
喫煙者で極度の辛党。
Dorothea ドロテア
聖暦1922年12月24日生。
遠オルステ属州ペシュト出身。
副隊長。
常に薄い笑顔で感情を隠す。
現実を冷徹に直視しているが故のニヒリスト。
SMGによる支援・制圧射撃担当だが、その本領は近接格闘。
Adelheid アーデルハイト
聖暦1924年2月24日生。
ポルスカ属州ルシャワ出身。
小隊の狙撃手。狙った標的は外さないほどの射撃の名手。
あまり感情を表に出さず与えられた任務を淡々とこなすが、それは心を閉ざしたが故。
過去の心の古傷により刃物には触れられない。
愛称は「ハイジ」
Christa クリスタ
聖暦1925年6月6日生。
近オルステ属州ウィンナ出身。
考えるよりも先に引き金を引き、戦いの中に己の存在意義を見出そうとするのは捨てられた過去があるがため。
意外と面倒見がよく料理上手。
戦闘では先方を務め、突破口を開く。
デージー小隊
Gänseblümchen Zug
Ilis イーリス
聖暦1928年3月1日生。
イベリコ王国ロムス出身。
天真爛漫で小隊内で一番幼く見えるが、困難な作戦でも明るく前向きに取り組むポジティブさが隊内では欠かせない。
彼女こそが血染めの妖精<レッドキャップ>の異名に相応しい。
隊をまとめる小隊長。
軍内における呼称は"1(アインス)"
Cornelia コルネリア
聖暦1929年8月15日生。
イベリコ王国フィレンツォ出身。
この世に救いはない、両親が死んだ時に全てを諦めた性悪論者。
「たとえ今死ぬも後で死ぬも変わらない。ならば私の手で命を奪おう」
瞬発力に優れる白兵戦闘担当。その際の得物は大型ナイフ。
軍内における呼称は"2(ツヴァイ)"
Agrippina アグリッピーナ
聖暦1929年11月30日生。
イベリコ王国ナポレ出身。
物腰の柔らかさと交渉能力に長けた、デージーの中でも一番大人びた人物。
同時に、彼女が笑ったとしても瞳の奥が笑うことは決してない。
隊内の愛称は「ピーナ」
呼称は"3(ドライ)"
Agata アガタ
聖暦1930年2月9日生。
出身不明。
『不吉の黒髪』『悪魔の子』と呼ばれ、髪色が見えて間もなく親に捨てられた、ベネトの孤児院育ち。孤児院でも虐められた。
引っ込み思案でおどおどしているが、その引き金を引く意思は澱まない。
制圧射撃担当。
軍内における呼称は"4(フィーア)"